シュスラー博士とは? 19世紀の医学から生まれた細胞塩の思想

ヴィルヘルム・ハインリヒ・シュスラー博士の肖像(19世紀)
ヴィルヘルム・ハインリヒ・シュスラー(1821–1898)。1890年代、撮影者不明。パブリックドメイン(Wikimedia Commons)

シュスラーソルトは、ドイツの医師ヴィルヘルム・ハインリヒ・シュスラー(Wilhelm Heinrich Schüßler、1821–1898)が19世紀に構想した「バイオケミー(Biochemie)」に由来するミネラル塩の体系です。

現在では「細胞塩」「ティッシュソルト」とも呼ばれ、基本12種類と後世に加えられた補助塩が紹介されています。

語学から医学へ

シュスラーは1821年にドイツ北西部のツヴィッシェンアーン付近で生まれました。

語学を学び、私教師として働いたのち、比較的遅い時期に医学を学びました。

1898年版の英訳書に付された追悼文によると、パリ、ベルリン、ギーセン、プラハで学び、1857年にオルデンブルクでの開業資格を得ています。

医学と並行してホメオパシーも学び、開業当初からホメオパシーの方式で診療していたことも同書に記されています。

当時の細胞研究とミネラル

19世紀の医学では、ルドルフ・ウィルヒョウの細胞病理学が大きな影響を与えました。

また、ヤーコプ・モレショットは生体の構成物質と生理機能の関係に注目しました。

シュスラーはこうした学説を背景に、細胞や組織にある無機塩が生命活動を支えており、その働きの乱れが病気と結びつくという独自の考えを発展させました。

ここで使われる「バイオケミー」は、現代の研究分野としての生化学をそのまま指す言葉ではありません。

シュスラーは自身の治療体系の名称として用いました。

「簡略化された療法」の発表

1873年にシュスラーは、新しい治療体系を発表しました。

翌1874年には『Eine abgekürzte Therapie(簡略化された療法)』を刊行。

その後も改訂を重ね、死の直前まで内容を見直していました。

現在確認できる重要な資料の一つが、1898年に刊行された第25版の英訳『An Abridged Therapy』です。

この版の序文は、著者の意向に沿って原文を忠実に訳したことを強調しています。

博士の考え方をどう読むか

シュスラーは、無機塩を少量かつ段階的に希釈・調製した製剤を使うことを考えました。

個々の塩を、血液、粘膜、骨、神経、皮膚などと結びつけて記述しています。

これは当時の医療思想や物質観を知るうえで興味深い資料ですが、現代の分子生物学や薬理試験で確立した説明として読み替えることはできません。

このサイトでは、博士自身の記述、後世の追加塩に関する説明、現代の化学や栄養学の事実を区別します。

その違いが見えることで、シュスラーソルトを歴史から理解しながら、27種類の名前と特徴を調べられるようにしています。

参考資料

関連ページ